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公共サービスにおけるICTの利活用について

かつての行政や公共サービスのイメージは旧態依然とした紙による運用で、コンピュータなどICTの活用など考えられないというものでした。

しかし、少子高齢化が進む中、ICTを活用した低コストできめ細かい公共サービスの提供や議会活動のICTを使った広報など様々な面での発想の転換と具体化が行われています。

ともすればコンピュータは一部の人だけのもので、使い慣れていない人にとってはメリットが少ないと思われがちですが、実際はそうではなく全ての人に利益となり恩恵が受けられるのです。そして、その実例を紹介するとともに、今後公共サービスでのICT活用はどのような方向を目指すのかということについて掘り下げて行きます。

公共サービスにおけるICT活用の現状

総務省が2014年に掲げた「スマート・ジャパンICT戦略」の中では、ICTの国際競争力強化などと並んで、「ICT成長戦略Ⅱ」として公共サービスなどを含む「社会的問題の解決を」重点ポイントに一つにあげています。

このように国がICT利活用を重点施策の一つとして進めている中、しかし現状はまだまだ十分に利活用が進んでいるとは言えません。一部の先進的に進められている自治体はありますが、多くの場合、十分にICT利活用が進められていないのが現状です。その原因は以下の3点に集約されます。

  1. 電子自治体としての機能が十分でない
  2. 行政側の理解や職員の知識も不十分である
  3. 自治体(行政)側と住民との間で利用方法などの認識に相違がある

こういった課題が残る中、現在ICTの利活用が進んでいる先進的な事例をいくつか紹介します。ここでは2008年に全国に先駆けてテレワークを導入するなどICTの利活用については先進的な取り組みが行われている佐賀県の事例を紹介します。

<99さがネット〜佐賀県の事例>

従来見えにくかった救急の搬送状況をクラウド上で見える化をはかり、救急・行政・医療機関・救急現場など関係者間で連携出来るようにすると同時に、現場の救急隊員などにタブレットを配布し、クラウド上の情報を利用しての適切かつ迅速な救急対応が行えるようになった。

<テレワークの促進〜佐賀県の事例>

県の全部署にタブレットを導入するとともに、仮想デスクトップを活用してオフィス以外の自宅や出張先でも同じように仕事が行えるようにし、育児や介護などでの時短などフレキシブルな働き方に対応できるようにした。また、災害時が職員が出勤することなく迅速な情報発信が行えたり、例えば農業の現場で指導員が農家の方に動画を交えて説明したり、不明点をその場で専門家にテレビ電話をしたりなど、単に育児や介護といった対象者だけでなく活用に広がりがうまれている。

これ以外にもコンビニでの証明書発行サービスや10月から運用が開始されるオンラインでの行政手続きサービスである「マイナポータル」など公共サービスにおけるさまざまなICT利活用の取り組みが開始されています。

さらに余談ではありますが、滋賀県大津市議会のICT利活用を活用した情報の共有や議会の見える化への取り組みなど、行政のみならず議会の場でのICT利活用も進められ始めています。

なぜ、今ICT利活用が取り上げられるのか

先の章では、公共サービスでICTがどの程度活用されているのか、といった現状に加えて、現在行われている先進的な取り組みのいくつかを紹介しました。

しかし、そもそもなぜ今これだけ「ICTの利活用」ということが取り上げられているのでしょうか。どこの自治体でも行政・議会とICTの利活用について聞かれないところはないと言っても過言ではない状況です。

「ICTの利活用」といったことが大きく取り上げられている理由、それは以下の3つに集約されます。

  1. 少子高齢化に伴う税収減と人材減に対応するための業務効率の向上
  2. 住民サービスの利便性の向上
  3. 情報技術を活用した防災体制の強化

2015年実施の国勢調査で1920年の調査開始以来で初めて人口が減少しました。こういった中、全国の多くの自治体では人口減少と少子高齢化による労働人口の減少による税収減に見舞われています。さらには国からの地方交付税も年々減少している中、少ない投資で効率良く公共サービスを提供し、サービスのレベル低下を防ぐことが急務となっています。

また、ICTは例えばテレビやラジオのように子供からお年寄りまで全ての人がメリットを享受できるものです。今年の10月からコンビニでの住民票などの証明書の取得サービスが始まり、またさまざまな行政手続きをオンラインで行うことのできるWebサイトである「マイナポータル」も開始を目前にしています。「役所の窓口まで行って手続きをする必要がなくなる」「24時間いつでも手続きができる」といった大きなメリットがあります。

もう一つ忘れてはならないのが「防災」です。災害時にもっとも大切なことは「正しい情報の収集と周知」です。ICTを使って災害現場と情報を共有し、瞬時に情報を本部に集約し、住民に周知する。また、大規模災害などで公共サービスの存続が危ぶまれる場合でも、公共サービスのICT化が進められるとインターネットを介してバックアップデータに接続して素早く公共サービスを復旧させるといったことも可能になります。こういった自治体のBCP(事業継続性計画)という観点からのICTは大きな力を発揮することでしょう。

ICTがもたらす未来の公共サービスとは?

私たちの暮らしを便利にしてくれるICT。将来はさらに利活用が進み、公共サービスのみならずさまざまな面で私たちに恩恵をもたらしてくれることは間違いありません。

来るべき未来、ICTを活用した公共サービスは私たちの暮らしをどのように変えているのでしょうか。例えば以下のようなサービスが将来行われているのではないでしょうか。

  • 自宅からのオンラインでの証明書等の手続きと取得
  • 電子選挙
  • 自宅情報端末へのより綿密な災害情報や避難指示等の配信
  • 自動運転車による公共交通サービス
  • 積雪時のロボット除雪車による自律的除雪作業

先ほど、佐賀県の事例で農業の現場と専門家との情報連携について説明しましたが、ICTを使うことで、ともすれば垣根のあったこれらの関係がICTを利用することで、今後いっそう行政と市民との連携が密に行えるようになると考えられます。

先ほども説明しましたが、ICTはコンピュータのわかる人や若者のものではなく、テレビやラジオなど老若男女誰しもがメリットを享受できるものです。今後、ICTがさらに私たちの生活を便利にしてくれることはまちがいありませんが、同時に行うべきことは「一部の人のものではなく全体が利益を得られる」ということを念頭にして利活用を進めていくことだと考えられます。

まとめ

政府の「ICT成長戦略」の中でも、公共サービスにおけるICTの利活用は重点項目の一つに位置付けられています。

少子高齢化による人口減などでの税収減が見込まれ、加えてコスト削減による職員数の現状などが予想される中、公共サービスの質を落とさずさらに向上させていくためには、従来までの行政手法では限界があります。

そういった中、これらの諸問題を解決するための方法として重要視されているのが、今回取り上げた「ICTの利活用」です。

<参考>
「ICT成長戦略推進会議:総務省」

http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ict_seichou_suishin/index.html

「救急車の“たらい回し”を解消せよ! 佐賀県のiPadを使った取り組み:インプレス」

http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/case/642475.html

「救急医療でのICT活 (「99さがネット」)① – 佐賀県」

http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00353872/3_53872_40079_up_jan3gl35.pdf

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