「ビッグデータ元年」と呼ばれた2014年から早2年、最近ではビッグデータを活用した成功事例などがちらほらと目に留まります。
それらの事例を見てみると「ビッグデータってすごい!」という気持ちになる方が多いので、「自社でも活用を始めた」という企業も少なくないでしょう。
しかし実際はどうでしょうか?ビッグデータ、しっかりと活用出来ていますか?もしかして活用失敗といった状況になっていませんか?
実は、ビッグデータ活用に踏み切る企業は増加しているものの、これに比例して活用に失敗している企業も増加しています。
そしてそんな企業にはいくつか共通の特徴が見受けられるのです。
そこでここでは、ビッグデータ活用に失敗する企業の特徴を紹介します。
もしも、自社に当てはまる項目があれば要注意なので、早急に軌道修正を行いましょう。
1.活用のポイントがずれている
ビッグデータを活用すれば売上げ向上や新規顧客獲得なども夢ではありません。
しかし活用のポイントがずれてしまうと、効果が半減どころから無駄な労力を費やしてしまっていることになります。
よくある事例を挙げると、売上げ向上のため全体売上げに占める割合の少ない顧客セグメントに一生懸命アプローチしているケースです。
例えば、全体売上げに対し1%の売上げを占める顧客セグメントにアプローチし、売上げを50%増加させたとします。
「やった!50%も増加した!」と喜ぶかもしれませんが、全体売上げからすれば0.5%の増加に過ぎません。
これがもしも売上げ全体の50%を占める顧客セグメントに対するアプローチなら、売上げを10%でも増加させれば全体売上げに対する増加率は5%になります。
しかも、労力的にはほぼ同等となればどちらに注力すべきかは明白です。
「売上げ向上のために、売上げ率の低い顧客セグメントの底上げをする」と考えることが多いですが、あまりにニッチな顧客セグメントに一生懸命になっても非効率的だということを忘れてはいけません。
2.自社の強みを伸ばせていない
ビッグデータ活用の基本的なポイントとは、自社の強みを発揮する領域でデータ分析を活用することです。
これは前述した「活用ポイントのずれ」に類似した失敗ケースですが、自社の苦手領域をビッグデータ活用で伸ばそうとしても、失敗に終わることがほとんどとなります。
つまり、ビッグデータは得意領域をさらに伸ばすことに活用するのがベストだということです。
この失敗ケースは「オールラウンダーでありたい」という日本人的な考えが根付いている企業にありがちなので、古い商習慣がある企業では特に注意が必要です。
「ビッグデータ活用によるこの領域での伸びしろはどれくらいか?」を予めしっかりと評価しておきましょう。
3.タイムリーなデータ処理ができていない
ビッグデータとは米ガートナー社が提唱するように「Volume:大量のデータ」「Velocity:高速に更新されるデータ」「Variety:広範囲なデータ」の「3V」で構成されているものです。
そこで重要なのが、“データ処理と可視化をタイムリーに行い意思決定を迅速に下していくこと”となります。
しかし多くの企業がタイムリーなデータ処理が実現できない環境にあり、ビッグデータを十分に活用できていないのです。
対策としてはやはり、高速にデータ処理を行えるプラットフォームを導入することでしょう。
例えばインテリジェント・モデルが提供する大規模バッチシステム「ODIP(オーディップ)」では、従来のシステムでは実現できなかった大規模データの処理を迅速に行うことができます。
こうしたプラットフォームを導入しデータ処理の迅速性を高めることで、初めてビッグデータを最大限に活用できる環境が整います。
4.常識的な仮説しか立てられていない
ビッグデータ活用で売上げ前年比1.2%増に成功した「ダイドードリンコ」の事例をご存知でしょうか?
「ダイドードリンコ」は自動販売機事業でお馴染みの企業ですが、自動販売機における商品配置は“Zの法則”に基づいていました。
Zの法則とは人の視線は「左上→右上→左下→右下」の順で動くものという心理学的法則であり、これに基づき主力商品を上段に配置していました。
しかし同社が全ての自動販売機にアイトラッキング(人の視線を認識するセンサー)を設置したところ、消費者の視線は下段に集中していることが判明しました。
これは常識的な仮説を立てていては到底知ることができなかった事実でしょう。
では、なぜ同社はこの事実を突きとめるに至ったのか?
それは従来のデータ分析における「仮説→検証」という基本プロセスを無視し、まずはデータ収集を行ったためです。
ビッグデータ時代と呼ばれる以前は、データ収集自体困難なものでした。
センサーがまだ高価な時代であったためデータ分析対象が限定され、コストと効率性を苦慮し仮説を立てるというプロセスが存在していたのです。
こうした従来の分析プロセスである“仮説”がビッグデータ活用の足枷となっているケースが少なくありません。
大切なのは「活用目的と分析対象が定まったらとにかく分析すること!」です。
また、資金やリソースによっては従来のデータ分析通り「仮説→検証」というプロセスを踏まなければならないケースもあります。
その時は“常識的な考えに囚われず仮説を立てること”が重要です。
常識的な仮説からは常識的な結果しか待ち受けていないのです。
5.結局経験と勘に頼ってしまう
ビッグデータ分析の現場では、従来の“経験と勘”といった思考回路を極限まで排除する必要があります。
既に多くの経営者が「これからの時代経験と勘では市場競争を生き抜いていくことができない」ということを実感していることでしょう。
にも関わらず経験と勘に頼ってしまうのは、変化を恐れているからです。
「このデータの信憑性は果たして高いのか?今まで自分が培ってきた経験や勘の方が正しいのではないか?」
このように不安になる気持ちはわかりますが、データは常に正直です。
的確なデータ分析から得た情報ならまず信憑性は高いと言えます。
もちろん、データを手にするだけでなく「どう活用するか?」が最も重要であり、ここが経験と勘の使いどころでしょう。
ですので意思決定者としてはまず目の前のデータを信じ、これをどのように活用していくかを考えることが重要となります。
6.KPIがやり過ぎ
ビッグデータ活用の目的は売上げ向上や新規顧客獲得など様々でしょうが、KPIを設定する企業がほとんどかと思います。
ちなみにKPIとは「Key Performance Indicator:重要業績評価指標」のことであり、最終的な目標の達成率を評価するために用いられる指標です。
このKPIを設定しすぎたことにより、失敗するケースが少なからず存在します。
ある企業では3,000ものKPIを設定し「売上げ向上」という本来の目標を見失ってしまうという自体に陥ってしまいました。
本来の目標ではなく目の前のKPIばかり追う日々になってしまい、さらには現場の業績評価もKPIを基準にしてしまい不正が横行。
この企業では後にシンプルな経営方針に転換したことで市場シェアを回復しましたが、そのままKPIに押しつぶされている企業も少なくありません。
目標の進捗率を評価するためにKPIの設定は重要ですが、目標を見失うほどやり過ぎるのは厳禁です。
7.事例信者になってしまっている
「ビッグデータ活用を始めたいけど、どう活用すればいいか分からない」という企業にありがちなケースですが、活用方法が分からない場合まず事例などを参考にしていると思います。
参考程度に留めておければいいのですが、ここで「自社と同じ境遇で成功した事例があるはず!それを見つけて活用方法を探ろう」という考え方になってしまうと危険です。
事例を漁っては「これは自社には適していない」と次々に切り捨て、やっと「自社に適した事例を見つけた!」と事例を参考にビッグデータ活用をしてみても、結局失敗に終わる。
時間を無駄にしてしまった上に労力やコストまで水の泡にしてしまう失敗ケースです。
こういった事例信者にならないためにも、まずは「事例はあくまで参考程度、インスピレーションを得るために留めておく」という意識を持つことが重要です。
そもそも、自社と似たような境遇の企業とまったく同じビッグデータ活用をしても、それが成功するとは限りません。
企業によってビジネスモデルや解決したい課題が多種多様なように、ビッグデータ活用も多種多様なのです。
従って事例を真似るのではなく、あくまで“自社オリジナルのビッグデータ活用”を行う必要があります。
まとめ
ビッグデータは決して魔法の杖ではなく、活用さえすれば成功するというものでもありません。
活用のポイントをしっかりと抑えて初めて適切なデータ分析が可能となります。
皆さんの企業ではビッグデータ活用のニーズがありますか?もしくは既に活用していますか?
もしもニーズがあったり、すでに活用しているというのであれば今回紹介したビッグデータ活用に失敗する企業の特徴を覚えておいてください。
2016年は「ビッグデータ成熟期」とも言われ、各企業がいかにビッグデータを活用するかに注目が集まっています。
そして今後押し寄せるデジタル化の大きな波に備え、ビッグデータ活用の基盤を作り上げることができた企業が市場競争を勝ち抜いていくでしょう。
最後に、ビッグデータ活用で大切なのはトライ&エラーを繰り返し、適切な活用方法を探っていくことです。
一度のつまづきで諦める企業も多いですが、失敗から学び適切なビッグデータ活用を目指していってください。