基幹システムについて「知っているようで知らない」という方が多いようです。なぜなら、「基幹システム」という言葉自体、曖昧な情報ばかりが流通し、基幹システムの定義が明確になっていないという原因があります。
会計システムや営業システムなど、業務システムを指す言葉ならば、そもそもなぜ「業務システム」ではなくあえて基幹システムという言葉を使用するのでしょうか?
今回は、多くのビジネスパーソンが気になる、でも人には今更きけない、基幹システムの基礎について紹介していきます。
「基幹」とは何を指す言葉なのか?
基幹システムを英語にすると、「Core System」や「Enterprise System」、あるいは「Mission Critical System」などと訳されます。このうち「基幹」という言葉を表すにおいて、最適なものは「Mission Critical」でしょう。
Mission Criticalという言葉を日本語にすると「業務や事業を遂行する上で不可欠な要素」と訳すことができます。つまり、基幹とはこのMission Criticalと同じように、自社業務や事業を遂行する上で、欠かせない要素を指すといえます。
では、その欠かせない要素とは一体なんでしょうか?
それは、製品製造だったり管理会計だったり、顧客を管理するためのデータであったり実に様々です。これらはすべてが「基幹」であり、業務や事業を遂行する上で欠かせない要素です。加えて、基幹が指すところは業種や事業によって異なるのも特徴です。
≪一般的に言われている基幹システム≫
- 財務会計システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 生産管理システム
- 購買管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 人事管理システム
- 給与管理システム
- 勤怠管理システム
一般的な基幹システムをざっと挙げるだけでも、これだけの業務システムが、基幹システムとして分類されます。ただし、前述したように、すべての企業が等しく基幹システムを持っているわけではありません。たとえば、小売業にとっては、生産管理システムは不要なものなので、基幹システムにはなり得ません。
あるいは、銀行などの金融機関では、勘定管理システムなどが基幹システムとなります。
このように、基幹システムとは、企業が業務や事業を遂行する上で欠かせない役割を担っている、業務システムを指します。
基幹システムを統合管理するERPとは
基幹システム同様に、最近頻繁に耳にするようになったのが「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」というITシステムの名前です。すでにご存じの方も多いでしょうが、ここで簡単に説明しておきます。
ERPというITシステムが日本に浸透したのは1990年代後半のことです。当時、「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」という抜本的な業務改革手法が注目されたことと同時に、ERPに注目が集まりました。
BPRは企業の業務プロセスを根っこから改革するための要件として、既存システム環境の刷新する必要があります。そこで、財務会計システムや顧客管理システムなど、複数の基幹システムを統合して提供する、ERPにその役割が集中したのです。
当時世界では、ERPの導入によってBPRを実現し、抜本的な業務改革によって成功をおさめた海外企業が多数ありました。日本企業もそれにならってERPを続々と導入しました。しかし、蓋を開けてみれば、導入に失敗する企業が相次ぐという、悲惨な事態が待っていたのです。
原因は、海外ERPベンダーの「ベストプラクティスの集合体を導入できる」というセールス文句を、鵜呑みにしたためだと多くの専門家が語ります。
ベストプラクティスとは「特定の成果を得るために、最も効率良い手法」であり、ERPを導入することとで海外企業のベストプラクティスを、そのまま活用できるとされていたのです。しかし、日本企業と海外企業では、そもそも商習慣が異なるので、海外企業のベストプラクティスが適用するはずもありません。
こうして日本のERPブームは一気に下火となり、以降数年にわたって導入が敬遠されていました。
基幹システムのクラウド化と、クラウドERPの登場で国内市場が一変
ERPブームが下火になってからは、日本企業の多くが、再び部門最適型の基幹システム環境構築に取り組みました。こうしたシステム環境を一変したのが、クラウドサービスの登場です。
2006年に登場したAWS(Amazon・ウェブ・サービス)を皮切りに、既存システムをクラウド環境へ移行したり、クラウド上で開発環境を整えらえるPaaS/IaaSサービスが爆発的に市場を拡大し、一気に市民権を得ることになりました。
そこで多くの企業が、基幹システムのクラウド化に乗り出しています。日本のIT人材不足という慢性的な問題もあり、企業のIT人材も不足気味となり、システム運用負担を大幅に削減できる、クラウド化に着目したのです。
加えて、クラウドではインフラリソースを自由に拡張できるため、増え続けるデータの保存先としても注目されていました。
こうした市場背景の中、クラウドERPの登場によって、基幹システムのクラウド化はさらに加速します。
クラウドERPとは、1990年代後半に流行したERPをクラウド環境で構築し、サービスとして提供するというSaaS型のクラウドサービスです。企業は、ERPをオンプレミスで導入する必要がなく、PC端末とインターネット接続環境、毎月の利用コストさえあれば、大規模な統合基幹システム環境を導入することができます。
クラウドERPのニーズは特に中小企業の間で高まり、現在では、数年後にオンプレミス環境のERP市場を超えるともいわれています。
基幹システムがビジネスの足かせになっている企業も多い
クラウド化などの進歩を遂げている基幹システム。
銀行の勘定系システムなど、明らかにERPではまかないきれない、そしてクラウド化には向かないシステムというのは世の中に多数存在します。
実はこのような基幹システムがビジネスの足かせになってしまっている企業も少なくありません。
理由は、基幹システムの老朽化と分断化です。
従来、企業は部門最適型や業務最適型の基幹システムを導入し、部署ごとに最適化された業務プロセスを提供してきました。しかし、そうした基幹システムの多くは古いバージョンのまま管理され、アップデートや刷新が行われていません。
導入当時は自社のビジネスニーズに対応できていた基幹システムも、経年と共に、激変するビジネスニーズに追い付かなくなってしまっています。加えて、多くの基幹システムが分断化、すなわち統合管理ができない状態にあります。
データ活用が企業課題の一つとして挙がっている今、基幹システムを統合し、データの一元管理によって迅速なデータ活用環境は欠かせません。基幹システムが分断化されたままでは、それが足かせとなり、ロースピードなビジネスを強要することになってしまうのです。
その一方で基幹システムを刷新となると、相当なコストと労力が発生します。いかに安価に効率よく基幹システムを刷新するのかが多くの企業にとって大きな課題となっています。
そのためには従来型のシステム開発手法ではなく、ODIPのような超高速開発ツールなどをうまく取り入れながら新たなシステムを構築していくことが重要になってきます。
まとめ
基幹システムは、企業のビジネスを支えるシステムだからこそ、時代と共に変化させていくことが大切です。「自社のビジネススピードが鈍化している」と危機感を抱いているのであれば、基幹システムの抜本的な環境の見直しを行いましょう。