基幹システム再構築は、その規模を問わず失敗する企業が後を絶ちません。クラウド化やシステム刷新によって期待する効果を得るはずが、逆に業務がシステムによる制約を受けてしまったり、既存システム環境以上に柔軟性を欠いた環境になってしまうことは、少なくないのです。
こうした失敗の原因の多くは、場当たりな基幹システム再構築によって、正しい進め方を実行していないことにあります。今回は、基幹システム再構築に失敗しないための、進め方について紹介していきます。
1.プロジェクトチームの発足と、情報共有基盤を作る
基幹システム再構築に失敗する企業の多くは、プロジェクト推進体制が整わないまま踏み切ることが多くあります。その大きな原因として、基幹システム再構築にビジネス価値を見出していないという傾向があるのです。
≪基幹システム再構築の価値が不明確な例≫
ITシステムの基本耐用年数は10年と聞いているから、古くなったシステムを刷新したい
経営者からのトップダウンでシステム刷新が決まったから再構築したい
新しいテクノロジーを取り入れて、基幹システム環境を強化したい
クラウド基盤に移行するとコスト削減になると聞いて、基幹システム環境をクラウド化したい
こうした企業の多くは、なぜ基幹システムが自社にとって必要なのか、が不明慮です。そのため、場当たりな基幹システム再構築を推進してしまいがちで、高い確率で失敗に陥ります。
従って、基幹システム再構築を実行する企業がまず取るべき行動は、基幹システム再構築に明確な価値を見出すことです。その上で、プロジェクトチームを発足し、情報共有基盤を整えることでスムーズなプロジェクト推進を目指します。
2.何が課題で、どういった基幹システム再構築を目指すのか
次の実行すべきアクションは、現状課題を明確に把握することです。実は、基幹システム再構築を行うにおいて、何が課題なのかが明確になっていない企業が多く、結果としてビジネス効果に結び付かない基幹システム再構築を行っています。
こうした「課題の不明確」も、場当たりな基幹システム開発を行ってしまっていることに、大きく起因します。
そこで、まずは既存システム環境のアセスメント(現状評価)から行いましょう。アセスメントは、組織をまたがる業務と、それを遂行するためのシステムのつながりなどを洗い出します。業務プロセスを可視化して、システムがどういった役割を持っているかを、改めて整理するのです。
その上で、どこに問題があり、何が課題なのかを整理します。ここで最も重要なポイントは、業務プロセス全体を可視化することです。
業務プロセスというものはいくつもの作業の連なりです。さらに、複数の業務プロセスが絡み合い、一つの成果を生み出していることがあります。このため、業務プロセス全体の可視化を行わずに基幹システム再構築を行ってしまうと、一部の業務は効率アップに成功したものの、その他に業務に悪影響を及ぼしてしまうといった失敗が少なくありません。
既存システム環境のアセスメントが完了したら、どういった基幹システム再構築を目指すかを定義することも重要です。目指すべき基幹システム再構築の目標が定まっていなければ、プロジェクトチームはバラバラに行動してしまい、一貫した基幹システム再構築ができなくなってしまいます。
3.定義した基幹システム再構築に応じて開発手法を選ぶ
目指すべき基幹システム再構築が定義できたら、それに応じて開発手法を検討します。近年多い開発手法としては、アジャイル開発が中心となっています
アジャイル開発とは、システム開発を細かいサイクルで回し、失敗の少ない基幹システム再構築を目指すための開発手法です。たとえば次のようなサイクルで、開発を進めていきます。
- 基幹システム再構築の種類の応じて、少数精鋭のプロジェクトチームを作る
- プロジェクトチームは開発範囲をいくつもの細かい範囲(おおむね2週間で完了する範囲)に分け、業務プロセスの優先度を考慮しつつどの範囲から着手するかを決める
- プロジェクトチームは定められた期間内(ここでは2週間)に、その範囲の要求定義、実装、テスト、修正、リリースを行う
- リリースできた機能を評価し、次の業務プロセス範囲を決め着手する区分へ取り組む
こうした1~4の開発サイクルを継続して回していき、最終目標となる基幹システム再構築を目指すのがアジャイル開発の在り方です。
アジャイル開発は、従来のウォーターフォール開発に比べ、開発期間を短くしつつ、継続した改善を加えらえるというメリットがあります。従って、中規模な基幹システム開発などに向いています。
4.開発支援ツールなど適宜ITツールを利用する
企業の多くはIT人材不足という、慢性的な課題を抱えています。これを解決するための、基幹システム再構築に外部SIerを参加させるというケースが少なくありません。しかし、こうした方法以外にも「超高速開発ツール」など、開発支援ツールを導入するという方法もあります。
超高速開発ツールとは、業務アプリケーションなどの開発におけるプロセスを削減し、開発工数を短縮するためのツールまたはその手法です。これを使うことで、業務プロセスをプログラミングで設計し、大幅な開発工数削減を実現することができます。
参考:IMKKブログ「超高速開発ツールとは?5分で理解できる、概要から課題まで」
インテリジェントモデルが提供する「ODIP」は、GUIベースの設計ツールを実装していることで、超高速開発ツールと大規模バッチ処理システムという、2つの側面を併せ持ちます。これにより、大規模な工数削減が実現可能です。
こうした開発支援ツールは、外部SIerの参画よりもコミュニケーションコストを少なくし、スムーズな基幹システム再構築が行えるというメリットがあります。企業のIT人材不足を解消するために、検討しておくべきITシステムの一つです。
5.プロジェクトチーム内のコミュニケーションを促進する
基幹システム再構築を円滑に進めるためには、プロジェクトチーム内のコミュニケーション促進が何よりも重要です。情報共有を徹底し、チーム一丸となって一つも目標を達成しようを開発を進めれば、一人一人が高いパフォーマンスを発揮できます。
そのためにも、プロジェクトマネージャの責任は重大です。なぜなら、プロジェクトチーム内のコミュニケーションは、プロジェクトマネージャの采配によって大きく変化するためです。適材適所はもちろんのこと、各メンバーがコミュニケーションを取りやすいよう、環境を整える必要があります。
まとめ
基幹システム再構築を実行する上で、最も時間をかけていただきたいのがアセスメントと要件定義です。これらを徹底するかしないかで、基幹システム再構築の効果が大きく変わります。システム設計や開発に関しては、開発支援ツールの導入などで短縮する余地が大いにあります。しかし、プロジェクトの指針ともなるアセスメントと要件定義はそうもいかないので、十分な時間をかけ、自社にとって最適な基幹システム再構築を行いましょう。