少し前まで頻繁に耳にしていた「基幹システム」という言葉。最近では知っていて当たり前の言葉であり、改めに人に聞くのは恥ずかしいという方が多いのではないでしょうか。結局、「基幹システムって業務システムのことでしょ」と結論付けて、間違った解釈をしている方もいます。
基幹システムという言葉が知っていて当たり前になったのは、それがビジネスにとって不可欠な要素として、多くの企業で導入が進んでいるからです。そのため情報システムでなくても、基幹システムの概要や業務システムとの違いを知っておかないと、人に聞く以上に恥ずかしい思いをするかもしれません。
基幹システムについて曖昧に理解しているという方は、ここでその概要や業務システムとの違いについて学びましょう。
基幹システムってなに?
基幹システムを簡単に表すならば「経営上不可欠なシステム」です。ただこれだけではまだフワッとしているので具体的に解説します。
企業には様々なシステムが稼働しています。在庫を管理するシステム、販売を管理するシステム、収支を管理するシステムなどその種類は多様です。それらのシステムの中で何が基幹システムにあたるかというと、「経営活動に直結するもの」です。
たとえば製造業において在庫管理システムは欠かせません。在庫とは流動的な資産です。この資産を適切に管理しなければキャッシュフローが悪化したり、不良在庫が増えて大きな損失を生んでしまいます。従って在庫管理は経営上不可欠なシステムです。
販売管理システムはどうでしょうか?企業規模が大きくなるとこれも経営上不可欠なシステムです。会計管理システムにいたっては企業が健全な経営をしていくためには、絶対的に必要なシステムです。つまりこれらのシステムは基幹システムであり、業種にもよるものの経営に無くてはならないものです。
一方、グループウェアなどコミュニケーションを促進するためのシステムは、経営上絶対に必要なシステムとは言えません。電話や電子メールがあればコミュニケーションは取れますし、ファイルサーバを設置すればファイル共有もできます。従ってグループウェアは基幹システムには分類されません。
このように、経営活動に直結するようなシステムが「基幹システム」と呼ばれます。
主な基幹システム
- 在庫管理システム
- 仕入管理システム
- 販売管理システム
- 生産管理システム
- 会計管理システム
- 人事給与システム
業務システムってなに?
業務システムは「業務を円滑に遂行するためのシステム」です。そのため、広義には基幹システムも業務システムのうちに入ります。しかし基幹システムという言葉が浸透した今では、業務システムは「基幹システム以外のシステム」を指すことが多くなっています。
たとえば先述したグループウェアもその一つです。他にも顧客管理システムや営業支援システム、ドキュメント管理システムなどが該当します。
ただし、顧客管理システムと営業支援システムに関しては高い導入効果があるとされ、ケースバイケースで機関システムに含まれることがあります。
以上のことを踏まえて明確に結論付けると、「基幹システムは経営上不可欠なシステム」で「業務システムはそれ以外のシステム」となります。
ERPについて
基幹システムについて解説する上で外せないキーワードが「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」です。直訳すると「企業情報計画」であり、多くの場合は「統合基幹業務システム」と呼ばれます。
基幹システムと業務システムを曖昧に理解してしまう原因は、ERP(統合基幹業務システム)という言葉自体にもあるかもしれません。
では、ERPとは何なのか?その答えは「経営に不可欠な基幹システムとそれ以外の業務システムを統合したソリューション」です。ソリューションとは「解決法」や「回答」を意味する言葉で、情報システム界では「経営課題を解決するための用いるITシステムおよびサービス」を指します。
つまりERPとは経営課題を解決するために、基幹システムと業務システムを統合したIT製品および同時に提供されるサービスのことです。主なERP製品としてMicrosoft Dynamics 365やNetSuiteがあります。
ERPに統合されている主な基幹システム、業務システム
- 財務会計システム
- 生産管理システム
- 仕入管理システム
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 人事管理システム
- 給与管理システム
- 勤怠管理システム
- 顧客管理システム
- 営業支援システム
- 配送管理システム
- グループウェア
- マーケティングツール
- ECシステム
- CMS(コンテンツ管理システム)
- データ分析ツール
基幹システムの問題点とERPの必要性
なぜ基幹システムと合わせてERPについて知る必要があるかというと、ERPが従来の基幹システムにある課題を解決する鍵になるからです。
従来の基幹システムの問題とは「分断化」と「老朽化」にあります。1990年代にそれまで活躍していた汎用機に代わって、部門特化型システムの導入が進みました。部門ごとに最適化されたシステムを使うことは、当時画期的な取り組みで生産性を大幅に向上するというメリットがありました。しかし、時代の変化と共に部門特化型システムには多くの問題が浮上します。
次第にインターネットが普及し、一企業が取り扱う情報量が爆発的に多くなったことで、分断化されたシステムが問題になります。同じ情報を別々のシステムに2重3重と入力しなければならなかったり、結果としてデータの信頼が失われ、システムが意味をなさなくなっていきます。加えて老朽化したシステムでは時代のニーズに合わなくなり、生産性が向上すると信じられてきた基幹システムが足かせとなっていたのです。
企業はこうした状況に対し「各基幹システムおよび業務システムの連携」という課題を抱えていました。ただしこの課題を解決する取り組みの多くは失敗しています。ブランドの異なる基幹システムの連携は容易ではなく、システムによってはすでにベンダーサポートが終了しているものもあり、取り組みは難航しました。
そこで登場したのがERPです。欧米諸国から登場したERPは瞬く間に日本に上陸し、当時大企業を中心にOracleやSAPといった大手ERPベンダーの製品が導入されました。ERPは基幹システムと業務システムが予め統合されているので、連携問題や互換性の心配が無く、容易に統合環境を整えられます。
しかし当時のERPは海外企業の商習慣に合わせたものばかりだったため、日本企業のERP導入は上手くいかないケースが多かったのが実情です。現在では、多くの国産ERPが登場したり、海外製品もカスタマイズ可能なものが多く企業独自の商習慣に合わせられるものが増えたため、大企業だけでなく中小企業でも導入が進んでいます。
まとめ
基幹システムと業務システムおよびERP。本稿によって、少しでも多くの方が基幹システムと業務システムの違いを知っていただければ幸いです。最近ではIT人材不足問題から、唐突に情報システムへの異動を言い渡されるケースが増えています。これまで基幹システムと業務システムの違いについて知らなかった方は、この機会にITの世界にもっと触れてみてはいかがでしょうか?