今回は、基幹系システムと情報系システムの違いについて解説します。
IT用語辞典では、基幹系システムについて次のように説明しています。
「基幹系システムとは、企業の情報システムのうち、業務内容と直接に関わる販売や在庫管理、財務などを扱うもの。あるいは、単に、業務やサービスの中核となる重要なシステム。」
引用:IT用語辞典「基幹系システム 【 mission-critical system 】 業務系システム / 基幹業務システム」
このことから、基幹系システムとは一般的に次のようなシステムを指します。
≪主な基幹系システム≫
- 財務会計システム
- 生産管理システム
- 在庫管理システム
- 仕入管理システム
- 販売管理システム
- 人事給与システム
では、情報系システムとは何でしょうか?
情報系システムの定義とは
上記に基幹系システムの例を挙げたものの、実は「基幹系システム」とは特定のシステムを指す言葉ではありません。IT用語辞典にもあるように「業務やサービスの中核となる重要なシステム。」を指す言葉です。英語では「ミッション・クリティカル・システム」と呼ばれます。
では、基幹系システムに対して情報系システムの定義はどうなるのか?その答えは、「業務やサービスに直接関係はないが必要なシステム」となります。
たとえばグループウェアというシステムは、組織内外のコミュニケーションを円滑にするためにオンライン会議ツールやチャットツール、スケジュール管理ツールなどを総合的に提供する製品です。このグループウェアが導入されていないと業務が回らないかというと、そうでない企業の方が多いでしょう。
グループウェアを導入していなくともコミュニケーションを円滑にするためのツールは数多くあり、必ずしも必要というわけではありません。ただし、グループウェアがあることで組織のコミュニケーションが円滑になり、その結果生産性が上がったり業績アップにつながるということはあります。
従ってこうしたシステムは「情報系システム」と呼ばれ、投資としての優先度は低い傾向にあります。
「基幹系」「情報系」と分けるのはもう古い?
情報システム界で頻繁に飛び交う「基幹系」「情報系」という言葉も、実はもう古いのではないかという見解が強まっています。
「基幹系システム」と聞くと、先ほど列挙したシステムを想像する人が少なくありません。言い換えれば「それらのシステムこそ経営の最重要」と固定概念を持っている方が多いということです。
基幹系システムの定義は企業によって異なります。にもかかわらず、景気が悪くなると真っ先に情報系システムが切り捨てられ、固定概念によって重要と思い込んでいるシステムに投資が集中します。しかし果たして、その企業にとって基幹系システムは本当に「基幹系システム」なのでしょうか?
実は基幹系システムの固定概念によってIT投資に失敗する企業は少なくありません。景気が悪くなったからと真っ先に切り捨てた情報系システムが、業績との相関関係を分析してみると実は高い依存関係にあったというケースが珍しくないのです。
「基幹系」と「情報系」と分ける考え方が古いとされている理由はもう一つあります。それがクラウドコンピューティングの台頭です。
クラウドコンピューティング技術が進歩したことで、企業は安価に、スピーディにインフラやプラットフォーム、あるいはシステム自体を調達できる時代になりました。必要な時に必要なモノだけを調達できるクラウドコンピューティングの登場によって、景気が悪いからと情報系システムが切り捨てられることも少なくなってきました。これまで基幹系と呼称されていたシステムが、徐々に基幹系システムへとシフトし出しました。
こうした時代背景によって「基幹系」「情報系」と分けるのはもう古いという人が増えています。ただし、なおも2つのワードは情報システム界で頻繁に飛び交っているので、その違いを覚えておいて損はないでしょう。
基幹系システムよりも重要なERPシステムとは
経営にとってミッションクリティカル(重要、不可欠)なシステムである基幹系システム。複数の基幹系システムを一つにまとめたのがERPシステムです。
ERPとは「エンタープライズ・リソース・プランニング(企業情報計画)」略であり、もともとは企業の基幹情報を統合し、かつリアルタイムに処理し、効率良く全体最適化を目指す経営概念です。それが発展し、今では基幹系システムをまとめたITソリューションとして提供されています。
昨今のIT事情では、基幹系システムが何かを理解するよりも、ERPシステムについて深く知ることが大切かもしれません。なぜなら、以前は大企業が導入するものとされてきたERPシステムも近年では中小企業での浸透が目覚ましく、ERPシステムを導入することが企業成長の前提条件となってきているからです。
先述したクラウドコンピューティングの台頭によって、ERPシステム市場も大きな変化を遂げました。矢野経済研究所の調査によれば、2016年のERPパッケージライセンス市場は、エンドユーザー渡し価格ベースで1,130億4,000万円と、前年比4.4%増の成長を見せています。中でもクラウドERPシステムの成長が大きく、これまでパッケージ版のERPシステムを導入していたERPベンダーのほとんどが、ビジネスの中心をクラウドへとシフトしているようです。
引用:ITmedia「クラウド化が加速するERP、市場規模は前年比4.4%増」
クラウドERPシステムが急速に成長する理由はまず「導入のしやすさ」にあります。従来必要だったインフラ調達は要らず、サービスを利用するためのインターネット接続環境と定期料金のみで導入可能です。ソフトウェアインストールや細かいパラメータ設定もないため、導入から本格稼働までも短期間で済みます。
他にも外出先からでもシステムにアクセスできたり、セキュリティ強化など様々なメリットがあり、大企業から中小企業まで業種を問わず注目されているのです。
ただし、必ずしもクラウドの方がメリットが高い、というわけではありません。独自の商習慣を持ちクラウドERPシステムでは業務要件を満たせないような企業では、従来通りにオンプレミスでERPシステムを構築し、業務要件を満たせるようカスタマイズした方がよいケースもあります。
システム構築に大規模バッチ処理システムを
今回は「基幹系」と「情報系」の言葉の違い、最終的にはERPシステムについて紹介しました。システムを導入する際は、同時に大規模バッチ処理システムの導入もご検討ください。ERPシステムを導入するということは、組織全体の情報を一か所に集約し、情報活用力を高めるということです。ただし、膨大な量の情報を一か所で管理することは、処理に多大な時間がかかったりして、業務に支障をきたす可能性があります。ERPシステムによって全体最適化をはかりつつも、情報処理が業務に支障をきたさないために大規模バッチ処理システムが必要になるでしょう。