2016年はいよいよ「IoT元年」とされ、多方面でIoT製品の誕生に注目が集まっています。そして、2010年頃から徐々に一般化した“クラウド”。既に多くのユーザーがクラウドの存在を認知し、様々なサービスを利用しています。
この2つにはどんな関係性があるのか皆さんはご存知でしょうか。実はIoTとクラウドは非常に関わりが深く、強く共鳴し合っています。
今回はIoTとクラウドという2つのキーワードが話題を集めている理由、そして2つが合わさることでもたらされるものを解説していきます。
IoTとクラウドについての整理
IoTとは
IoTとは「Internet of Thingsの略」であり、日本語では「モノのインターネット」などと表現されています。これは “全てのモノとインターネットを接続して、生活の利便性やサービスの質を向上させていこう“という概念及び技術のことです。
皆さんが「インターネットに接続されているモノは?」ときかれて、想像するのはPCやスマートフォンといったネットワーク機器かと思います。こちらはそもそもインターネットに接続することを前提として生まれてきたモノです。
では、これまでインターネットに接続されていなかったモノまでも接続されるようになったらどうなるのか?皆さんが普段利用している“椅子”がインターネットに接続されているところを想像してみてください。
「椅子とインターネットに何の関連性が?」と思うかもしれませんが、こういった今までインターネットに接続されていなかったモノまで接続してしまおうというのがIoTの目指しているところです。
例えば椅子に座った際、取り付けられているセンサーが重量やクッションの変形、背もたれにかかる圧力などのデータを取得し、インターネットを通じてサーバへとデータが蓄積されていきます。そしてデータ処理がなされたあとは、分析結果をフィードバックして座っている人に合わせて椅子が自動的に背もたれの角度やクッションの強度を最適化する。これがIoTです。
さらに、インターネットに接続された様々なモノが巨大なネットワークを形成していくことで相互間で通信・制御が行えるようになり、さらに利便性やサービスの質が向上していきます。
クラウドとは
クラウドとは以前の米Google CEOであるエリック・シュミット氏(現会長)によって生み出された言葉であり、フワフワと実体のないインターネット上の世界を「Cloud:雲」という言葉で表現したものです。
また、この言葉が浸透していくにつれ“インターネット経由で利用するサービス”に対し「クラウドサービス」という言葉が定着しました。
現在クラウドは、IaaS/PaaS/SaaSの3つに大別されています。
IaaS…Infrastructure as a Service
日本語では「サービスとしてのインフラ」という意味を持ちシステム開発などのために必要なインフラ、いわゆるサーバのCPUやメモリ、ストレージなどを提供します。
PaaS…Platform as a Service
日本語では「サービスとしてのプラットフォーム」という意味を持ち、IaaS上にOSや開発環境などのが既に構築されているプラットフォームを提供します。
Software as a Service
日本語では「サービスとしてのソフトウェア」という意味を持ち、Webアプリケーションやサービスをインターネット経由で提供します。従来はインストールすることでしか利用できなかったMicrosoft Officeが、オンラインでも利用できるようになったとイメージするとわかりやすいでしょう。
IoTとクラウドの関係性
IoTとクラウドの関係性とは何なのか?これを説明するには、もう一つ重要なキーワードが存在します。それが2014年頃から爆発的に浸透した“ビッグデータ”です。
2つのキーワードを繋ぐ“ビッグデータ”
IoT製品には基本的に様々なセンサーが取り付けられています。これはユーザーの利用状況などをデータとして取得し、適切なフィードバックやベネフィットを提供するために絶対的に必要不可欠です。このため今後センサーは多様化とコモディティ化が進み、あらゆるモノにセンサーが搭載されていきます。
一つのIoT製品が持つセンサーから取得出来るデータ量は極めて小さなものです。しかし全てのIoT製品から生成されるデータを集めると、それはもう膨大な量となります。いわゆるビッグデータですね。
このようにIoT製品から生まれるビッグデータをどこに格納するのか?ここでクラウドが登場します。
クラウドがデータ管理プラットフォームとして選ばれている理由
ビッグデータはその名の通り膨大なデータ群を指すものであり、企業によってはPT(ペタバイト:TBの1,024倍)級のデータ群として生成されています。これら全てのデータを自社サーバに格納・管理できるのは、世界でも限られた企業のみです。
しかし実際、国内の中小企業ではPT級のデータ群を管理していることは少ないと思います。このため現状は自社サーバなどで事足りている企業がほとんどでしょう。
しかしIoT製品が次々に市場に出回ると、データ生成のスピードも量もこれまで数倍~数十倍に跳ね上がります。こうなると到底自社サーバでは全てのデータを管理しきれません。
例えばMacやiPhoneといったデジタル機器を製造・販売するApple社ですが、この世界的な大企業でさえデータ格納のプラットフォームとしてAWS(Amazon Web Service)やMicrosfot Azureといったクラウドサービスと契約を結んでいます。直近では今後のデータ増加を見据えて、Google Cloud Platformと契約したというニュースが話題となりました。
「だってAppleはそもそもデジタル機器業者じゃん」と思うなかれ。IoT製品の普及では本当にデータが何倍にも膨れ上がり、1社の中小企業が世界クラスのデータを格納するといったことが日常茶飯事になるのです。
もう一つ、クラウドがビッグデータ管理のプラットフォームとして選ばれている理由は“低コスト”と“高拡張性”です。
クラウドは基本的に従量課金制であり、つまり使った分だけのコストしか発生しません。ビッグデータは常に大量に生成されていきますが、不要となったデータはどんどん廃棄していく必要があります。
もしもデータが無限に増加し続ければリソースの拡張も無限に必要となり、当然コストも増加するでしょう。これが自社サーバであった場合、データを廃棄することでリソースに余剰が出てしまい、コストパフォーマンスが低下するという懸念があります。
しかしクラウドなら、リソースを自由に増減できる拡張性を持ち合わせています。データ量が増加したときはリソースを拡大し、データ量が減少したときはリソースを縮小する。つまり、都度データ量の変化に合わせリソースとコストを最適化できるようになるのです。
IoTとクラウドがもたらすものは、利便性とサービスの質の向上だけではない
IoT解説の部分で、IoTについて“全てのモノとインターネットを接続して、生活の利便性やサービスの質を向上させていこう“という概念及び技術のことだと解説しました。
これはどちらかというと消費者目線でのメリットとなります。消費者のメリットが向上すれば販促効果にも繋がり、結果企業の利益として還元されますがビジネスにおけるメリットはそれだけではありません。
例えばIoT製品を用いて従業員の業務データをビッグデータとして収集し分析すれば、業務効率化に繋がる部分が見えてきます。こうした取り組みは各方面で既に始まっており、多くの企業が業効率化に成功しています。
ちなみに、IoTの恩恵を最も受けやすいと言われてるのがマーケティングです。マーケティングは基本的に大量のデータを定量的・定性的に分析し、ユーザーのニーズや購買プロセスを把握した上で展開していきます。そしてデータ量が増えれば増えるほど分析の精度は増していきます。
つまり、これまで以上にピンポイントかつ正確なマーケティングを展開することができるようになるのです。また、IoT製品市場で出回ることで取得出来るデータの種類に関しても数倍になると言われています。多種多様なデータを多角的に分析することで、今まで気づくことのできなかった新たな知見が多く導き出されていくことでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?最後に、今回の要点をに以下まとめます。
- IoTとは全てのモノとインターネットを繋げる概念及び技術
- クラウドとはインターネット上で提供されている様々なサービス
- IoT製品からは従来の数倍~数十倍のビッグデータが生み出される
- ビッグデータに対応するためのプラットフォームとしてクラウドが選ばれている
- 理由は“高拡張性”と“低コスト”である
- 将来中小企業でもPT級のデータを当たり前のように取り扱うようになる
- IoTは消費者だけでなく、ビジネスにも多くのメリットや変革をもたらす
IoTとクラウド、そしてビッグデータは単なるバズワードではなく、既に多くの業界を牽引するキーワードとなりつつあります。この傾向は次第に増していき、デジタル化の波は数年後に予想もしないほど大きなものとなっていることでしょう。
つまり今、皆さんは時代の節目に立たされていると言い換えることもできます。時代の節目に取り残される企業というのは、いつの時代も変化に対応しきれなかった企業です。従って、全ての企業が今後数年間で起きる大きな変化に対応しなければなりません。
皆さんの企業では変化に対応し得る準備を既に行っているでしょうか?もしも「まだ」というのであればこれを機にIoTやクラウド、ビッグデータについて考え、今後の企業の在り方について考えてみてください。