システム

ハイブリッドクラウドとは何なのか?

近年、日本においてもクラウド議論の中心が「クラウドを導入するか?」ではなく「クラウドをどう活用するか?」という点に移行しています。もはやクラウドファーストという言葉すら耳にしなくなったほど、クラウドは企業のITインフラに浸透したサービスです。

しかし、既存のITインフラすべてをクラウドに移行するのはまだまだ難しい問題です。コストやパフォーマンス、リスクマネジメントの観点からクラウドのみを実現するには課題が残されています。企業が今まで積み上げてきたIT資産をすべて捨ててクラウドに移行するのに、莫大な投資は避けられないでしょう。

そこで多くの企業は既存のITインフラに適材適所で様々なクラウドを合わせることで、ハイブリッドクラウドという環境としてIT基盤を構築しています。今回は、このハイブリッドクラウドが何なのか?詳しく解説していきます。

ハイブリッドクラウドの目的とは?

既存のITインフラ(オンプレミス)と様々なクラウド(IaaS、Paas、SaaS、DaaS等)を活用するハイブリッドクラウド。その目的についてご紹介します。

1.適正コストを維持する

既存のITインフラすべてをクラウドに移行するとなると莫大な投資がかかります。しかし、適宜クラウドを取入れることでコストの適正化を図り、現時点でITインフラにかかっているコストを下げることが可能です。たとえば、とある業務システムの繁忙期と閑散期に必要とされるパフォーマンスに大きな差異がある場合、重要な繁忙期に対応できるよう最大限のリソースを確保しておく必要があります。つまり閑散期にはそのリソースが余っている状態です。

一方クラウドを活用した場合、繁忙期や閑散期に合わせてリソースを自由に増減できるため適正コストを維持できるという特徴があります。これはあくまで一例なので、活用方法によって様々なコストの適正化を図ることもできるでしょう。

2.システムパフォーマンスの維持

イントラネットで利用しているITインフラに対して、クラウドではシステムパフォーマンスが低下する傾向にあります。それもそのはず、クラウドはインターネット回線を利用しているためアクセスの集中に関わらずシステムパフォーマンスは低下します。しかし、外出先からも同じシステムにアクセスできるという利点も大きいため、やはりハイブリッドクラウドとして既存のITインフラと組み合わせることが大切です。

3.ユーザーの利便性を追求する

クラウドの特徴はインターネット回線を利用してシステムにアクセスするため、外出先からも社内と同じシステムが利用できます。ユーザーの利便性を追求すれば「社外でも利用できる」という点は大きなメリットです。もちろんすべてのシステムをクラウドに移行するというのは難しいので、グループウェアなど組織のコミュニケーションを支援するクラウドの導入が多いようです

4.BCP(事業継続計画)の一環として

災害大国とも言える日本では、自然災害や火災によっていつ自社のデータセンターが被害を受けるか分かりません。2011年に発生した東日本大震災では「データが損失した」という被害があった企業や自治体は全体の33.1%に達しています。実に3分の1の企業や自治体が重要情報を含むデータを損失しています。

参考:総務省「情報通信白書 平成24年版 第2節 東日本大震災と事業継続

5.DevOpsを実現するために

DevOpsとは開発チームと運用チームが協力体制を取れる組織文化を作り、適宜ツールを導入することで素早い開発・リリース・改善を実現することです。DevとOpsが協力するためには共通ツールやコミュニケーションツールが必要なため、必然的にクラウドを活用することになるでしょう。DevOpsの詳しい解説については「結局DevOpsとは何なのか? 」をご覧ください。

6.新しいテクノロジーを取り入れる

世界のIT技術は日進月歩で発展しているため、今年流行したテクノロジーが来年には新しいテクノロジーに替わっている可能性もあります。しかしその度にオンプレミスでテクノロジーを導入すると莫大なコストがかかってしまうため、適宜クラウドを利用することでコストダウンを狙いつつ最新テクノロジーを導入できます。

以上のように、ハイブリッドクラウドを構築する目的は実に多様です。企業の数だけIT課題が存在するので、企業によってハイブリッドクラウドの目的は変わります。

ハイブリッドクラウドの運用負担は意外に大きい?

クラウドを導入すると運用負担が軽減すると信じてハイブリッドクラウドを導入する企業も多いでしょう。実際に多くのクラウドベンダーが運用負担軽減というメリットを訴求して、プロモーションを展開しているところをよく見かけます。

確かにクラウドを導入することで運用負担が軽減するのは確かです。しかし、既存のITインフラとクラウドが混在した環境のハイブリッドクラウドでは、その本質を理解していない運用負担が軽減するどころか増えてしまうリスクがあります。

たとえば既存のITインフラに適用しているセキュリティポリシーをクラウドの適用しようとしても、上手く適用できずに運用負担が増加する可能性があります。それもそのはず、オンプレミスとクラウドではデータ管理に関する作業も大きく違うため、適用できないのは当然でしょう。しかしそれに気づかないでハイブリッドクラウドを構築してしまうと、運用負担が増加してハイブリッドクラウドを構築する意義が無くなってしまいます。

そこで大切なことはオンプレミスとクラウドの運用はまったくの別物と認識して、新たにクラウドの運用計画を立て、マニュアルを作成して標準化することです。まずクラウドの運用項目を明確にすることでオンプレミスとの共通点も見えてくるので、全部とはいかずとも一部の運用を共通化することができます。

誰が?(担当者)、何を?(運用項目)、どうするのか?(標準化)

これらを明確に策定してハイブリッドクラウドの運用負担を極力削減できれば、既存のITインフラにある運用負担を軽減できるでしょう。

ハイブリッドクラウドの今後

MM総研が今年発表した資料によると、2016年の国内クラウドサービス市場規模は1兆4,003億円。前年に比べて約1.4倍成長しています。これが2021年にはさらに2.6倍の3兆5,713億円に達するとのこと。国内市場だけでもこれだけの成長率を見せているクラウドは、今後様々なサービスが登場したりコモディティ化が進む市場だとされています。

引用:ZDNet Japan「2021年度に異変? 国内クラウド市場はこれからどうなるか

こうしたクラウド市場の急激な成長を目の当たりにすると、ハイブリッドクラウドから完全なクラウド環境に移行していく企業が増えていくのではないかと考えます。クラウドに完全移行するコストは徐々に下がっていき、そうなればオンプレミスでITインフラを運用する意義も薄れていきます。

なので、2021年時点では完全にクラウド環境でITインフラを運用する企業がかなり増加していることでしょう。皆さんの企業では、現在どういった形でクラウドを運用していますか?将来的なクラウドの拡大に備えて、ITインフラを徐々にクラウド化していきましょう。

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